月夜に1人の私を見つけて
おまけ
イルミネーションが光る街中を抜けた先にある老舗のイタリアンレストランで、雪奈と大和はクリスマスディナーを堪能していた。
「雪奈さんって、ホントに俺の気持ちに気付いてなかったんですね?」
切り分けてもらったピザを食べながら、大和が雪奈に尋ねた。
「え?う、うん。」
パスタをフォークでゆっくり巻き取りながら、雪奈が申し訳無さげにそう返すと、大和は盛大な溜息をついた。
「マジかー。逆にすげー。俺、入社した時からめっちゃアプローチしてたつもりなんだけどなぁ。」
「そ、そうなの?」
「そうですよー。てか、周りの人はみんな俺が雪奈さんのこと好きって気付いてたと思います。まぁ、それでいいと思ってたけど。」
「そんなにアプローチしてくれてたっけ?」
「してましたっ!だって、俺しょっぱなから宮下さんって呼ばずに雪奈さんって呼んでたじゃないですか。」
「うん?だってそれは、二宮くんが『名前で呼んでいいですか?』って初日に聞いてきたから…。教育担当と、教育される側で、仲良くなるためだと思ってたけど?」
「まさか。そんな入社早々に理由もなく先輩を名前で呼ぶとかないでしょ、フツー。」
「そうなの?」
「そうですよ!距離感詰めたいと思ったから言ったのにー。まじで眼中になかったんか…。」