月夜に1人の私を見つけて
「あ、そういえば。」
大和がふと、思い出したように言った。
「名前!お互いになんて呼ぼうか?」
たまにタメ口になる大和を見ていると、付き合っている実感が湧いてくる。
「呼び方ねー。二宮くんはなんて呼ばれたいの?」
「俺は、さっき『大和くん』って呼んでもらったのが刺さったなぁ。」
「あれっ、聞こえてたの?」
「聞こえてた聞こえてた。」
ちょっと恥ずかしそうにする雪奈を見て、大和がにししっと嬉しそうに笑う。
「じゃあ…大和くん?」
名前で呼んでみると、大和は顔を赤く染めながら「それ、いい。マジで嬉しい。」と呟いた。
「じゃあ、雪奈さんは?呼び捨て?ちゃん付け?それともユッキーとか?」
「ユッキーって呼ばれたの初めて笑」
「…やば。雪奈さんからの『初めて♡』の言葉の威力すげー。」
「ちょ、ちょっと!変な方向に話持っていかないでっ!」
「あははっ、ごめんごめん。じゃあ…ゆきちゃん、とかゆきなちゃん、とかは?」
「ちゃ…ちゃん付けは恥ずかしいかも。」
「えー?そのうち慣れるんじゃないかなー?」
「いつになっても恥ずかしいと思う…。」
「んー、じゃあ雪奈って、呼び捨てはどう?ちなみに俺は、呼び捨てしたいけど…。」
「そ、そうなの?でも、急に呼び捨てって、慣れないなぁ。」
「じゃあ、たまに呼び捨てするとか?」
「不意打ちで呼ばれたらドキッとしそうだね。」
あははっと笑っている雪奈に、大和は嬉しそうに声をかけた。
「雪奈」
「え!?は、はいっ!」
「好きだよ。」
「なっ…!」
不意打ちを食らった雪奈の心臓は、正直に反応してドクドク言っている。
顔も熱い。
対して、大和はいたずらっぽく笑いながら「かーわいっ」と呟いた。
恥ずかしさを隠すようにして「もう!」とだけ言うと、雪奈は残りのスパゲティを頬張った。
スパゲティと一緒に、幸せも噛みしめた。