月夜に1人の私を見つけて

「あ、そういえば。」


大和がふと、思い出したように言った。


「名前!お互いになんて呼ぼうか?」


たまにタメ口になる大和を見ていると、付き合っている実感が湧いてくる。


「呼び方ねー。二宮くんはなんて呼ばれたいの?」


「俺は、さっき『大和くん』って呼んでもらったのが刺さったなぁ。」


「あれっ、聞こえてたの?」


「聞こえてた聞こえてた。」


ちょっと恥ずかしそうにする雪奈を見て、大和がにししっと嬉しそうに笑う。


「じゃあ…大和くん?」


名前で呼んでみると、大和は顔を赤く染めながら「それ、いい。マジで嬉しい。」と呟いた。


「じゃあ、雪奈さんは?呼び捨て?ちゃん付け?それともユッキーとか?」


「ユッキーって呼ばれたの初めて笑」


「…やば。雪奈さんからの『初めて♡』の言葉の威力すげー。」


「ちょ、ちょっと!変な方向に話持っていかないでっ!」


「あははっ、ごめんごめん。じゃあ…ゆきちゃん、とかゆきなちゃん、とかは?」


「ちゃ…ちゃん付けは恥ずかしいかも。」


「えー?そのうち慣れるんじゃないかなー?」


「いつになっても恥ずかしいと思う…。」


「んー、じゃあ雪奈って、呼び捨てはどう?ちなみに俺は、呼び捨てしたいけど…。」


「そ、そうなの?でも、急に呼び捨てって、慣れないなぁ。」


「じゃあ、たまに呼び捨てするとか?」


「不意打ちで呼ばれたらドキッとしそうだね。」


あははっと笑っている雪奈に、大和は嬉しそうに声をかけた。


「雪奈」


「え!?は、はいっ!」


「好きだよ。」


「なっ…!」


不意打ちを食らった雪奈の心臓は、正直に反応してドクドク言っている。

顔も熱い。


対して、大和はいたずらっぽく笑いながら「かーわいっ」と呟いた。


恥ずかしさを隠すようにして「もう!」とだけ言うと、雪奈は残りのスパゲティを頬張った。


スパゲティと一緒に、幸せも噛みしめた。

< 78 / 81 >

この作品をシェア

pagetop