月夜に1人の私を見つけて

その日の夜。

20時になって、雪奈はようやくオフィスビルを出た。


外の道は、駅まで続く街路灯で照らし出されている。
見上げると、半月よりも少し膨らんだ月が、白く光っていた。


星空を見上げたまま、ほぅ、と息を吐くと、
風に乗って白い息がすうっと流れていった。


雪奈達の職場は、年末に向かって徐々に忙しくなってきていた。


繁忙期は、クリスマス前がピークで、クリスマスを過ぎると大抵、この忙しさも落ち着く傾向にある。



…クリスマス。



──去年は怜と過ごしたけど、今年は私、1人ぼっちだな…。


ぼんやりとそう考えながら駅に向かって歩いていたが、ふと、足が止まる。


怜とは最寄り駅が一緒だ。この時間に帰ると鉢合わせする可能性が高い。


先週別れたばかりでまだ気持ちの整理もできてないのに、平気な顔をするなんて、絶対できない。


怜のことを考えると、何となく食欲もわかなくて、最近、ろくに食べてもいない。


カフェにでも入って時間を潰すという選択肢もあるが、食欲は相変わらずないし、カップルを見るだけで、勝手に気分が落ち込んでしまいそうだし、行きたくない。

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