月夜に1人の私を見つけて
「ありがとう、大和くん。こんな私を、見つけてくれて。」
そう言った途端、大和に抱き寄せられた。
歩道の脇。
カップルが何組か通り過ぎる中、2人でしばらく抱きしめあった。
大和が優しく、雪奈の頭の上から声をかける。
「安心して。雪奈が例えどこにいたとしても、俺が必ず見つけるから。」
「…うん。大和くんは、いつも私を見つけてくれてたね。」
「今までもそうだったし、これからもそうだよ。雪奈は1人じゃない。」
「…ありがとう、大和くん。」
ゆっくり、どちらからともなく体を離すと、2人で見つめ合い、微笑みあった。
そして、手を繋いで寄り添い合ったまま、またゆっくりと歩き出し、駅へ向う。
淡く、儚げに、白く光る、細い月の下で──。
fin.