月夜に1人の私を見つけて
──公園、寄って行こうかな。
駅まで続く道の脇にある広い公園。
少し先に、ベンチと自販機が見えた。
雪奈は植木の間を抜けて、すぐそこに見える公園内の遊歩道を目指してゆっくり歩いた。
パンプスのヒールが、植木の脇の土に刺さらないよう、つま先の方へ重心をかけながら歩く。
遊歩道までくると、石畳の流れに沿って歩き、自販機を目指した。
自販機の目の前に立ち、『あったか~い』と書かれたミルクティーの下にあるボタンを押す。
ガコンッという音が妙に大きく、あたりに響き渡った。
出てきたミルクティーの缶を両手で包み込み、ベンチに座ってプルタブで飲み口を開けると、少しだけミルクティーを口の中に含んだ。
温かさとミルクティー独特の甘さが、口の中に広がる。
それが、なぜか無性に虚しく感じて、目元にじんわりと涙が滲んだ。
街路灯のあかりと月あかりを浴びて、公園のベンチに1人、座っている。
残業を頑張って、お給料をたくさんもらったところで、これから先、何に使えばいいというのか。
自己投資はもちろんするけど、それで可愛く、綺麗になったところで、一番褒めて欲しい人はもういない。
滲んでいた涙は、いつの間にか頬を伝って顎まで落ちてきていた。
その涙の雫が、ミルクティーの缶を持つ雪奈の手に当たった。
虚しい
平気なフリなんて、そう簡単に続けられるものでもない。
明日の朝も、きっと起きるのが辛いだろう。
時間が解決してくれる、なんてよく言うけれど、いつまでこんな辛い思いをし続けなければならないのだろう。
早く、この闇から抜け出したい。