真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

十粒目、あるいは十枚目

奔走した甲斐あって、無事に陛下のご友人のお祝いができた。


陛下はたいへんお喜びになり、「ジュディス、何か欲しいものはあるかしら?」とにこにこおっしゃった。

残念ながら思いつかず、「陛下のおそばに控えること、お仕えすることがわたしの喜びにございますわ」と言ったら大層怒られた。


「あなたにとってわたくしがよい主人であること、よい女王であることを嬉しく思います。けれど、わたくしは栄誉を授けるだけの傀儡ではなくてよ」


今欲しいものがないのなら、このお礼は取っておいて、然るべきときに嵩増しするから待ってなさい、という力強い副音声。

……お手数をおかけします。


陛下のご友人からも、丁寧なお礼の書簡をいただいた。


白い花を見て、陛下の高貴さを連想し、可愛らしい思い出とともに懐かしく嬉しく贈り物を受け取ったという旨が認めてあった。

わたしは花を集めただけだけだから、心よく花を譲り、白い株を勧めてくださった公爵夫人のおかげである。


そんなわけで、水面下のお祝いがつつがなく終了したお礼に、陛下から秘密裏に公爵夫人宛のお品物を受け取っている。


肩の荷が降りたわたしからの贈り物も添えて、お礼とともにお渡しするべく、今日もメルバーン公爵家を訪れたのだった。
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