真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「そうなの! たいへん勇気が必要だったのよ。では、引き続きそうするわ」

「はい、ぜひ」

「他に、気になるところはあるかしら?」


にこにこと微笑む女王に、恐れながらと前置いて、香りやペンの太さを指摘した。


女王はいつも甘やかな香水をつけている。同じ香りが便箋からほんのり香るのもよいものよ。

紙の匂いが立ち込めるより、甘い香りがする方が思い出深くなるでしょう。


それから、代筆者が違うので当たり前なのだけれど、ペンの太さが違っている。


ペンは末尾の署名となるべく同じものを使う方が、まだしもよい。

夜に読むからと言って読みやすさを優先し、太すぎるペンでは情緒に欠ける。

ペンはもう少し細い方が、陛下の筆跡のたおやかさが際立ってきて、よいように思われる。


「封筒や便箋は、どれもうつくしくて、たいへん心躍ります」

「よかったわ。特別に作らせたものもあるのよ」

「そうなのですね。産業も活発になって、たいへんよろしゅうございますね」


にこにこ笑顔を返しておく。


さて、問題はこれである。
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