真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

十一粒目、あるいは十一枚目

元夫から嘆願書が届いている、と気の毒そうな文官に呼び止められて、耳を疑った。


不出来な妻が城にいると聞いて押しかけてきたかつての夫は、堂々と城門の前に居座り、わたしの名を挙げて口汚く罵ったそうよ。

城門の警吏は不審人物によって無理矢理届けられた嘆願書を即座に捨てようとしたものの、わたしの名前を知っている方がそれを止め、陛下の書簡卿に関わりがあるのなら、なにかトラブルになってはよくないと一応受け取ってくださったのですって。


よくよく確認すると、元の書類は陛下のお名前と公印がある。

公印が押してある書類にまさか撤回を願う者がいるとは思いもよらず、結局処理に困ってたらい回しにされ、陛下に奏上する前に、まずはわたしの意向を確認に来てくださったらしい。


元夫はいまだ城門前に居座っていて、たとえ何日かかっても帰らない構えを見せている。

このままではいけない。あの人と話す許可をいただきに、陛下の執務室まで急いだ。
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