真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「おやめなさい、ジュディス。もうあなたと無関係になった者によって、あなたの外聞を悪くすることはないわ」


陛下は元夫の嘆願を聞き入れなかった。またわたしへの許可も出さなかった。


城門での騒ぎを理由に追い払うようお命じなさろうとしたけれど、「わたしが自分で説明してまいります。訪問客用の部屋をひとつ貸していただけないでしょうか」と無理にお願いを重ねる。


「いいえ、願いはすぐにでも取り下げるわ。あなたが危険を犯す必要はないのよ」

「ありがとう存じます。お優しいお気持ちを、たいへん嬉しく思いますわ。……お言葉ですが、陛下」


ゆっくりカーテシーをする。


「あの人は、はっきり伝えなければ伝わらない人です。直接会って話をすることが、相手の心を動かすと固く信じている人です」


用意してきた諸々が底をつき、一度帰宅したとしても、わたしに会えるまで、何日も通い続ける可能性がある。というか、十中八九そうなる。


「これからも何度も来られるよりは、一度で終わらせたく存じます」

「そうなの。あなたがそこまで言うのなら、そうなのでしょうね……。でも、二人きりでは心配だわ。衛兵をつけましょう」

「屈強な衛兵の方に来ていただいたら、あの人は自分が警戒されていると思うでしょう。そうしたら、あの人を余計に刺激してしまいますわ」

「では、衛兵は離れたところにつけるわ。部屋の中には入らないけれど、すぐに助けられるような場所よ」


ジュディス、と短くこちらを呼んだ女王は、静かな目をしていた。
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