真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「いいえ、謝っていただくようなことではありませんわ」


わたしは確かに、この人が来てくれて安心した。嬉しかったのだもの。


「メルバーン卿。ひとつ、お願いをしても?」

「何なりと」

「すっかり遅くなってしまいましたが、もし許されるなら、陛下にご報告とお礼を申し上げたいと存じます。お付き合いいただけますか」


陛下はお忙しい方だから、すぐにお会いできないかもしれないけれど、一応日付が変わらないうちに伺いたいわ。

多大なご迷惑とご心配、お手数をおかけしたのだもの。


メルバーン卿には念書まで作ってもらったのだから、一緒にご報告に伺うのが筋。

一度に報告が済んだ方が、忙しい女王のお時間を取らせないでしょうし。


「ああ、構わないとも」


二つ返事で頷いたメルバーン卿は、歩幅を合わせてわたしの隣を歩き、ともに陛下にご報告を済ませた。


「ああジュディス、来てくれてありがとう。あなたが無事でほんとうによかったわ」


執務室にすぐさま通され、立ち上がった陛下にきつく抱きしめられる。


ここで報告に来たわたしたちにお礼を言うところが、陛下のすてきなところ。敬愛されてやまない理由だわ。
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