真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
すとんと胸に落ちる。


……その通りだわ。あの人との結婚生活は、わたしが子どもではないから、始まったこと。


わたしが子どもだったら両親は手を尽くしてくれる。相談に乗ってくれる。


子どもではないから、誰にもうまく頼れずに、押し込めて。祈るように耐えて。大人ぶることばかりうまくなる。


でも、仕方ないの。このままでいいの。


毎日送ってもらったり、私室に二人きりになったりしたら、噂は避けられない。

相手がメルバーン卿でなくても、誰であっても不自然だもの。


こうして話をしてもらうだけで充分。夢のような時間をくれた。


今日の一度きりを抱えて、優しい夜で上書きできたら、それでいい。


節の高い指が、顔に流れたわたしの髪を優しく払った。そっと触れた指先に、目を細める。
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