真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「そしてお仕着せを着ようものなら、きみがただの侍女と間違えられて、どこぞの王族か貴族にでも声を掛けられはしないかと心配なんだ」

「それは、そうかもしれませんが……」


陛下のお祝いですもの、他国の王族や貴族の方が大勢いらっしゃるでしょうね。


高位の方に戯れに見初められるなど、王城勤めではよくあること。

紋章をつけているとなったら、もしかしたら違う反応かもしれないけれど。


「ジュディス文官」

「はい」


名前を呼ばれて隣を見上げたのに、目は合わない。メルバーン卿は前を向いたままで、そのヘイゼルに廊下のほの明るい燭台の火が、ちらちらと映り込んでいる。


「私に、きみにドレスを贈り、隣に立つ栄誉をくれないか」

「ドレスの色は決まっておりますが……」

「構わない。これは私の我がままなんだ。きみにドレスを贈りたい、というだけの」


勅許がなければ着られない色、白と青の組み合わせで、女王陛下とほぼお揃い。お仕着せを着ないならこれで、と指定された色。


陛下が白地に青い刺繍で、わたしが青地に白の刺繍。当然襟と袖と裾には紋章を入れることになる。


陛下のお好みに合わせ、髪はレースのリボンでまとめる。


このレースのリボンは隅に紋章が入ったものを持っているから、新しく用意する必要がない。陛下はレースのハンカチをお持ちになるわ。
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