真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
こう考えると、どこからどう見ても、陛下のお気に入りと一目で分かる装いだわ。


わたしはありがたいけれど、おしゃれな方は残念に思うこともあるかもしれないわね。好みや流行はなんにも関係ないんだもの。


パトロンの色と意向を身にまとい、パトロンの付属品扱いをされることに抵抗がないって、王城で過ごすには結構重要な適正なのかもしれないわ。


「勅許をいただきましたのに、こちらで用意せずに、あなたからのいただきものを着るのは失礼に当たりませんでしょうか」

「陛下は色のご指定はなさったが、作り手の指定はなさらなかった。女性がドレスを贈られるのはよくあることだ」


たとえ先立つものに余裕があるひとであっても、豪奢なドレスを贈られるのは一種のステータスになる。


でもわたしは、一度いただいたらずっと着てしまう。ましてや勅許の色なんだもの。


「わたしはきっと、これから先、同じ格好を重ねることになりますが……」

「きみは、」


メルバーン卿が一度、言葉を飲み込んだ間があった。


「きみは私が、それを踏まえて申し出たとは思わないか」

「っ」

「きみはきっと、一着を大事にする。……勅許の色なら、着る機会も多いだろう。袖を通す度、私が贈ったことを思い出してくれたらいい、と」


ずるい考えで申し出たとは、思わないか。
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