真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「ずるいとは思いません」

「きみは陛下から賜った真珠をつけて、薔薇の髪にするんだろう」

「そうですわね」


随分と熱心な口説き文句の中、「真珠の白が映えるな」とごく当然のように言われて嬉しかった。


陛下はお優しい方だもの、勅許をいただいたとはいえ、願えば服装など好きにさせてくださるでしょう。

お仕着せを着たら残念がられるかもしれないけれど、お叱りにはならないわ。


だからほんとうは、勅許の色じゃなくてもいいの。


メルバーン卿はドレスを贈りたいとは言うのに、勅許に基づいたものを選ぼうとしている。それは、わたしの仕事を優先してくれるということだわ。


「いつか勅許に関係なくドレスを贈りたい。せっかくのドレスが私の茶色ではもったいないから、私の色以外にするしかないが」

「あら、わたしはあなたのヘイゼルを羨ましく思いますわ。木漏れ日に透けると綺麗ですもの」


ふたりきりの窓辺、日差しに淡く透けた男の瞳は、うつくしかった。


「……だから、やめてくれ。そんなことを言われると期待する」
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