真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「ええ、分かっています。この場には今、私以外はいませんから問題ありません。こういった場合は、込み入った話などと言うのがふさわしいでしょうね」

「分かりました、そのようにいたします。教えていただきありがとう存じます」


別にメルバーン卿も気乗りしているわけではないらしい。


淡々と説明してくれてよかった。恥ずかしさが募らずに済む。


「では、込み入った話をしたいので、どうぞ中へ」


扉をもう少し開くと、メルバーン卿は少し目を見張ってみせた。


「……あなたが、素直に話をしてくれて、中にまで上げてくれるとは思いませんでした」

「お仕事の邪魔をしたいとは思いませんので」

「それはありがたいことです」


簡素な椅子を引いた後、お茶を出す。


扉を少し開けたままにしようすると、形のきれいな眉が上がった。


「私が仕事に真面目に取り組んでいるのは、聞こえているかと思っておりましたが?」

「もちろん聞こえております。女王の覚えめでたく、たいへん有能な働きぶりだそうですね」

「それは過分な評価をありがとうございます。何より、今、私の仕事ぶりを認めてくれたからこそ、中に通してくれたのかと思ったのですが」


違いましたか、とこちらを見据える目は、怒っていない。
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