真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

六粒目、あるいは六枚目

陛下のご相談に乗っていると、控えめなノックが聞こえた。


女王の執務室をノックするのは大抵文官である。今回も例にもれず、許しを得て扉を開いたのは、美丈夫の文官だった。


「あら、メルバーン卿」

「ご機嫌うるわしゅうございます、陛下。お呼びと伺いまいりました」


メルバーン卿の手には紙束が握られている。法律の何かだろう。


「陛下、わたしは一度失礼し、自室でお待ちしたいと存じますが、いかがでしょうか」


扉を出ようとしたわたしを、女王が穏やかに引き止める。


「いいえ、すぐに終わるから、このまま控えていて構わないわ。そうよね、メルバーン卿?」

「はい、もちろんです」

「かしこまりました」


隅で紅茶を傾けていると、しばらくして、ほんとうにすぐに法律の話が終わった。
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