真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「ジュディス。これから個人的な話を聞くわ」

「……はい」


きゅうと、手を握る。


「わたくしはあなたをかわいい妹のように思っているわ。ですから、そのつもりで聞いてちょうだい」

「はい」

「あなたは以前、離婚申請を出しているそうね」


キンと、心臓が冷えた音がした。耳鳴りかもしれない。


……こういう個人的な話だとは、思いもよらなかった。


「でも、あなたの夫、ウィリアム・カイムが取り下げた」

「……はい」


そう。わたしは陛下に仕えるようになってすぐに、離婚申請を出した。

もう二度と、あの部屋に帰りたくなかったから。


でも、それを知った夫は怒り、申請を取り消した。

妻が逃げるなど、あのひとには耐えがたいのよ。世間体を気にするひとだもの。


「同じウィリアムという名だから、メルバーン卿とも話をしにくいの?」

「いえ、その」


なんと言ったらいいのか、分からない。


確かに、夫と同じ名だと、メルバーン卿を苦手に思っていたときもある。


でも、彼は約束を守ってくれた。

言葉選びがすごかったのでこちらが勘違いしただけで、わたしの文筆と誇りを、蔑ろにはしなかった。


「……そのようなことは、ございません」
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