真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「では、質問を変えるわ。あなたは、カイムではなく、プリムローズに戻りたい?」

「……それは」


優しい言い方に変えているけれど、要は、離婚を手助けするということだ。


「あなたは有能よ。わたくしのそばで仕事を得た。本も出した。売り上げはすでに好調だそうで喜ばしいわ。夫に頼らずとも、十分食べていけるようになるでしょう」


ジュディス。わたくしの真珠、わたくしの薔薇。


「わたくしは、あなたのおかげで夫の心を取り戻したわ。ほんとうに感謝しているの」


この国に不利益をもたらさない範囲において、何をしてでも、あなたに報いたいと思っています。


「戻りたいのなら、あなたの友人として、また女王として、手を尽くすわ」

「陛下……」


わたしの幸運は、この心優しく親しみやすい女王に認められたことだと、常々思う。


「でも、あなたがプリムローズに戻れば、周囲は色めき立つでしょう。あなたを取り込めば、わたくしの信用と莫大な売上金、そして有能な女官が手に入るのだもの。このまま色恋を断る方便には、指輪は有効だわ」


驚かないで、聞いてちょうだい。


「メルバーン卿はどう?」
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