真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「陛下……!?」


何を言い出すの、このお方は。


「あなたと同じ文官で、有能でうつくしく、あなたと歳も近い。将来は有望よ。お似合いだわ」

「いえっ」


全然似合ってない。ほんとうに似合ってない。


「何より、あなたとあなたの文才をきっと大事にするわ。彼が、女だてらにだとか、賢しらにだとか言っているところを、見たことがないもの」


それは、そうなのだけれど。わたしもそう思うけれど……!


「陛下、わたしは中流階級の出です。公爵家とは釣り合いません」


いただいた耳飾りが取れそうなくらいぶんぶん否定すると、女王はにっこり笑った。晴れやかな笑顔だった。


「では、身分差以外はよいと思っているのね?」

「えっ、その」

「身分差はどうとでもするわよ。わたくしはあなたを手放したくないの」


あなたを大事にしていると周りに知らしめるよい機会になるから、あなただけの爵位を作って叙爵してもいいくらいなのよ。


「一代限りになってしまうけれど……」と気にしているけれど、気にするのはそこではありません、陛下。


「え、ええ!? もったいないお言葉をありがとう存じます」

「あら、嫌がらないなら今度叙爵するわ。ついでに伯爵家の養子に入りましょう。それで、メルバーン卿はどう?」


ついでではない。ついでなどの話ではないわ。話が早すぎる。
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