真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「メ、メルバーン卿、たいへんな失礼を……!」


自分の寸評など、聞いて楽しいものではない。


悪口を言わなかっただけ、マシだと思うしかないわ。


もはや泣きたい気分で頭を下げると、メルバーン卿は緩く首を振った。


「いや。きみは悪くない」

「あら、ひどい言い草ね、メルバーン卿。ではわたくしが悪いと言うの?」

「陛下はいたずらがすぎます。ですが、それに乗った私が一番悪うございます」

「いえ、いいえ、メルバーン卿は悪くありません……!」

「あらジュディス、では、やはりわたくし?」


女王の目がからかうように意地悪に光った。


堂々巡りである。


なんでそんなに楽しそうなんですか。お願いだから、陛下はちょっと黙っててください。


そうは言えないのが文官のさが。


「いえその、仕事に支障がないようにしているつもりでしたが、避けていると傍目に分かるほどだったのは、わたしの態度に問題があったと思います」

「……やはり私は、きみに避けられていたのか」


なんでメルバーン卿はそこで残念そうにするの……! やめて、話をややこしくしないでください……!


「だ、だってあなた、あなた、あんなことをおっしゃるから……!」
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