真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
ひゅうと、思わず息を呑んだ。女王から賜るとは、思いもよらない言葉だった。


女だてらに、賢しらに書き物をするわたしは、男性の領域に足を踏み入れた浅慮を異端だと罵られることはあれど、言祝(ことほ)いでもらうことは、ない。


「わたくし、ほんとうに嬉しく思うのよ、ジュディス」


あなたが二百年後に生まれたなら、きっと小説を書いたでしょう。

あなたが百年前に生まれたなら、きっと何も書けなかったでしょう。

しかしあなたはこの時代に生まれたゆえに、あなたの文才は書簡で花開いたのです。


歌うようだった。涼やかな声だった。祝福だと、思った。


「今の我が国では、書簡しか羽をのばせる場所がなくて、ごめんなさいね」

「い、いいえ。とんでもないことです」

「わたくしは、あなたほどきれいに言葉を選べないの。飾り立てすぎてもおかしいし、素直に書きすぎても幼稚でしょう」


あなたは、ちょうどいいのよ。


「あなたのそのきれいな言葉の花々は、選び方にあると思うの」

「……か、過分なお言葉をありがとう存じます」

「言葉はあなたによってうつくしく摘み取られ、飾られ、花束にされて贈られます。わたくしには、それがたいへん心地よく思われるわ」


ですから、ぜひ、わたくしの力になってほしいのよ。
< 7 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop