真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
八粒目、あるいは八枚目
夜、わたしにとっては仕事の時間。いろいろと陛下のご相談に乗り、ご提案を済ませて退出しようとしたところで、名前を呼ばれた。
「ジュディス」
「はい、陛下」
「わたくし、あなたのための執務室を作るわ。気が回らなくてごめんなさい」
さりげなく言われた内容はあまりに突拍子もなくて、思わず勢いよく顔を上げる。
陛下はこちらの視線に気づいているはずだけれど、あくまで穏やかに書簡を認めている。目は合わない。
目の前のひとがただの貴族であれば、当然のこと。けれど気さくで親しみやすい陛下は、御自ら目を合わせてくださるので、目が合わない方が珍しい。
これはどう考えても意図的だった。
何でもないことのように装ってくださっている陛下に、頭を下げる。
「……いいえ、とんでもないことです。ご配慮ありがとう存じます」
気が回らなかったのではない。女王は、わたしが取りまとめた本の功績を理由に、地道な根回しをしてくれたのだ。
「ジュディス」
「はい、陛下」
「わたくし、あなたのための執務室を作るわ。気が回らなくてごめんなさい」
さりげなく言われた内容はあまりに突拍子もなくて、思わず勢いよく顔を上げる。
陛下はこちらの視線に気づいているはずだけれど、あくまで穏やかに書簡を認めている。目は合わない。
目の前のひとがただの貴族であれば、当然のこと。けれど気さくで親しみやすい陛下は、御自ら目を合わせてくださるので、目が合わない方が珍しい。
これはどう考えても意図的だった。
何でもないことのように装ってくださっている陛下に、頭を下げる。
「……いいえ、とんでもないことです。ご配慮ありがとう存じます」
気が回らなかったのではない。女王は、わたしが取りまとめた本の功績を理由に、地道な根回しをしてくれたのだ。