真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇

わたしだけの執務室は、陛下の執務室がある建物の中ほどに作られ、わたしの私室も同じ建物の端に移された。


陛下の執務室にも、自分の執務室にも通いやすい位置取りで、わたしは叙爵に伴って、一人部屋と一人だけの執務室、実質自由な居場所をふたつも手に入れたことになる。


大部屋を与えようとしてくださった陛下のご提案は固辞し、私室は狭く、執務室は共有の執務室と同じ広さをお願いした。


私室ではほとんど寝るだけだから、衣服などの収納ができれば広さはいらないわ。

お仕着せの他の私服は、それほど多くない。仕事に一生懸命打ち込むつもりだから、これからも収納棚は圧迫しないでしょう。


執務室も、あんまり広くてがらんとしていても困るもの。今まで共有だったものが一人分になれば、充分広いわ。


至れり尽くせりの状況、陛下のお気に入り度合いを顕示するような異動に、身が引き締まる思いだった。わたしの瑕疵は、陛下にも及ぶ。


執務室は内装を自由にしてよいということで、窓をひとつ大きくくり抜いてもらい、窓明かりで仕事ができるようにしてもらう。


窓際には大きな机を置いてもらうの。そばに大事に持ってきた十角形の小机を置いて、燭台代わりにする。

夜の仕事は陛下の執務室で行うのだから、窓があれば燭台は小さくてよいわ。


四方を囲む壁のうち、窓が一面、雑貨の置き場や扉をつけた壁が一面、残りの二面は丸々資料棚を作ってもらい、日除けの布も紋章を刺繍してもらった。


ゆくゆくは、手持ちの資料でこの広い棚が全て埋まるくらい、これから先も陛下のお手伝いができたら嬉しい。