真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
周囲から叙爵のお祝いを提案される度、さまざまな資料や本をお願いしている。


自分の贈り物が陛下のお役に立つかもしれないとあっては、おかしなものを紛れさせることはできないし、誤魔化しもきかない。

なるほどお祝いにふさわしいという希少な物をいただいている。


こちらと縁を結ぶのを狙って贈り物をしようとする全然知らないひとたちは、陛下のご威光に頼ってお断りをしている。


だから、ここにあるのは、同僚や友人たちがお金を集め合い、見繕ってくれたものばかり。


心のこもった贈り物で資料棚の一角が埋まるのを、とても嬉しく思う。


見た目も壮観で、あると嬉しくて、仕事にも役立って、なんて素晴らしいんでしょう。


資料集めには時間がかかる。一度に探すのは難しいので、毎日暇を見つけては、少しずつ探して回っている。


ありがたいことに、面白そうな物を見つけると、陛下を含めた周囲が知らせてくれることもあって、毎日嬉しいことの連続よ。


面白い話や、うつくしい言い回し、よい香りの花、美麗な絵画、こまやかで上等な紙、腕のよい職人。


日々のあちらこちらに散らばる心くすぐるいろいろを、少しずつ書き留め、収集し、選りすぐって、整然と並べておくの。探しものは尽きない。
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