真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
温暖な場所で咲くその花は、海の向こう、二つ国境を越えた公国の特産品である。


気候の違いから我が国では珍しい花で、株を分けて咲くため、自生しているところを摘むのは難しいらしい。陛下のご友人は、ご自宅に特別にお庭を作らせているそうよ。


おそらくこちらの書庫に地理関係をまとめた文献があるから、それを確認して自生地を探し、陛下お抱えの騎士にでも取りに行ってもらって。

難しければ他の書庫にも当たってみて、それでもなければ、個人的に頼んでみましょう。


古くからの伝統あるお家には、一昔前の温室の流行の影響で、個人的な花園がやたらとあるわ。その中にお目当ての花が残っているかもしれないもの。

できれば一輪だけでなく分けていただいて、香りや見た目にこだわりたいところだわ。


それでも難しかったら、わたしの名前を隠して花売りから買おうかしら。


などとぐるぐる考えるわたしの前、広い廊下の先から、見知った、いかにも格式高い伝統あるお家のご子息が歩いてくる。


その他には法律書。メルバーン卿である。
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