真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「ありがとう存じます。ぜひお願いいたします」


今度こそ、言葉選びが合っていたらしい。メルバーン卿の笑顔が和らいだ。


「こちらこそ、我が家に栄誉をありがとう」

「いえ。助けてくださってありがとう存じます。わたしは夜間でなければいつでも構いません。公爵夫人のご都合のよい時間を教えていただけますか」

「先触れを出して母に確認する。分かり次第、きみに会いに来るよ」

「……メモでも構いません」


ひええ、知らせるのでいいです、会わなくていいです。


そうは言えなくておずおず申し出たのに、きょとんとした顔で「会って直接話した方が早いだろう」と言外に断られた。


「メモを残しておいて、いつ誰に見られるとも限らない。きみの仕事のためには、人に知られない方が望ましいんだろう」


確かに。わたしの執務室は陛下の執務室と違って、鍵を掛けていても、いざとなれば誰でも入れるもの。


「そう、ですね。では、その際はこの執務室にお願いできますか?」

「分かった。なるべく早く来られるように努力する」

「……はい」


わたし、思うの。メルバーン卿って、やっぱりこう、女性人気が出るべくして出ているっていうか、言葉選びがこう、ね。もっと他にあると思う。
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