犬系男子の犬飼くんは私にすごく懐いてます
「み、美奈ちゃん!?」
「やっぱり瑠夏だ。やっほー」
そこにいたのは友達の美奈ちゃん。
「どうして美奈ちゃんがここに!」
「お姉ちゃんと街の方に買い物に来たの。お姉ちゃんは今隣の店見てて」
今いるアーケード街は若い子向けの服屋さんが集中してるから、私たちくらいの年齢のお客さんもいる。けどまさか友達と会うとは思わなかったな。
「瑠夏こそどうしたの? て、あれ、犬飼くんじゃん」
「ども!」
美奈ちゃんは私のすぐ隣にいる犬飼くんを見て、なにやらニヤリとした表情を浮かべる。
「なになに? いつの間に付き合ってたの?」
「ち、違うよ美奈ちゃん!」
私は顔を真っ赤に染めて、両手をぶんぶんと振った。
途端に恥ずかしくなった私は必死にそれを否定する。
「えー、ほんとに〜」
「ほ、本当だよ! 今日は犬飼くんが遊びに誘ってくれて一緒に出掛けてて」
「そっか。じゃあデートだ」
「っ! う、うん…」
そう聞かれたら頷くしかない。実際これはデートなんだもん。
「あはは、相変わらずピュアだなぁ。こんなお子ちゃま相手だと犬飼くんも大変でしょ?」
「も、もう! からかわないでよ美奈ちゃん!」
「いや、俺は全然。瑠夏は素直で優しくていい子だし、俺は好きだよ」
「〜〜〜!?」
どうしてそんな真面目な顔で言うの〜!
しかも、今自然と好きって言われたけど、ライクの方…だよね。きっと。うん、そうに違いない!
「わぁお! だいぶ愛されてますな〜瑠夏さんや」
すると、美奈ちゃんは余計に悪戯な笑みを浮かべて私にこそっと言う。
「ねぇ、瑠夏は犬飼くんの事。どう思ってるの?」
「み、美奈ちゃん。犬飼くんの前でそんな」
「だから小声で話してるんじゃん」
チラッと横目で犬飼くんの方を見る。
「?」
彼は首を傾げている。
聞こえてないのかな。でも、
「ここじゃ言えないよ…」
「それ、答え言ってるようなものじゃない? ま、いいけどさ」
そうして、美奈ちゃんが私に近づけていた顔を離す。
「それにしても、いつの間にそんなに仲良くなったの? 確かに最近は一緒に帰ってたみたいだけどさー」
それからプイッと美奈ちゃんはそっぽを向いた。
「なんかもう普通に仲良いよね犬飼くんと」
「美奈ちゃん?」
「あーあ、私も仲良い男の子が欲しいなぁ〜」
それからゆっくりと後退りをして距離を空けていく。
「じゃあ、お邪魔虫はここで消えますので、デートを楽しんでくださいねお二人さん!」
そして、可愛く敬礼ポーズをした美奈ちゃんはそそくさとお店を出て行った。
お邪魔虫って、そんな事ないんだけどな。
「なんだか、元気な子だね瑠夏の友達」
「えっ、うん。でも、すごく良い子なんだよ美奈ちゃん」
「ははっ、それはなんとなく分かる」
それから、続けて犬飼くんが言った。
「瑠夏、さっきから顔赤いけど、最後の方何話してたの?」
「な、なんでもないよ!」
「そう?」
やっぱり気にしてたんだ。
でも、さっきの話は犬飼くんには言えないな。
美奈ちゃんには見透かされてるような気がしたけど、私ってそんなにわかりやすいのかな…。