犬系男子の犬飼くんは私にすごく懐いてます

 洋服屋さんを後にした私たちは、一つのお店の前に来ていた。

「犬飼くん、最後に来る場所がここで良かったの?」
「うん、今日は俺から誘ったから瑠夏が行きたいところに俺も行きたい!」
「でも、せっかく街の方に来たのに」
「行こ!」
「…あっ」

 当たり前のように手を引いてくれる犬飼くん。

 手を繋ぐのは今日だけで何度目かな。それでも、私の心はずっとドキドキしてる。
 きっかけは自分からだったのに、もう今では犬飼くんから手を繋いできてくれる。それがすごく、嬉しかった。
 犬飼くんは私のことを何でも優先してくれる。こんなに男の子に優しくされるのなんて初めて体験した。
 本当に私犬飼くんのこと…。

「わ! 結構人いるねー」

 自動ドアが開くと様々な音声が耳に入ってきた。
 店内も休日なだけあって、夕方のこの時間でも多くのお客さんがいた。

「街中だから。でも、あまりデートっぽくはなかったかなぁ」
「そんな事ないと思う。ほら、結構カップルで来てる人いるみたいだよ」

 犬飼くんの視線の先を見ると、確かに男女で来ている割合も多いみたい。

「瑠夏って、ゲーセンよく来るの?」

 そう、最後に私たちが来たのはゲームセンター。

 学生の遊ぶ場所の定番といえば、ここを挙げる人も多いと思う。でも、デートといえば映画館とか公園とか、そういうイメージが強かったけど、時間的にちょうど良いと思って私が提案したのだ。

「うん、美奈ちゃんとか他の友達とクレーンゲームとかプリクラとかで遊びに来るよ」
「俺もクレーンゲームは良くするなぁ。あと音ゲーとか」
「そうなんだ!」

 犬飼くんもゲームするんだ。男の子だもんね。興味あるのは当然だよね。

「ねぇ、瑠夏! どれで遊ぶ!?」

 子供のようにはしゃぐ犬飼くんに言われ、私は周りを見る。

「うーん。……犬飼くんは?」
「俺? 瑠夏がやりたいのやろうよ」
「私は行きたい場所とか犬飼くんに希望を聞いてもらってたから、最後くらい犬飼くんの好きなものやりたくて」
「!」

 私は繋いだ手をきゅっと握って笑顔で答える。
 ゲームセンターを提案したのは私だけど、やっぱり犬飼くんにも楽しんでもらいたい。

「んー、じゃあクレーンゲーム見に行こう! 瑠夏が普段どんなの取るのか知りたい」
「うん、いいよ」

 それから私たちはクレーンゲームのコーナーへ。
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