犬系男子の犬飼くんは私にすごく懐いてます
犬飼くんが遠くに行ってしまいそうな気がして、嫌な感じがする。
「付き合う気がないならさ、これ以上守には関わって欲しくないんだけど」
「…え」
そう言われて頭が真っ白になる。
「ど、どうして?」
「どうしても何も。守が可哀想じゃん」
可哀想?
私はなぜそんなことを言われるのかわからなかった。
「とぼけてるの? 守があんなに海野さんのこと気にしてたら普通気付くでしょ。なのに、いつまでも友達ってさ。そんなの可哀想に決まってるじゃん」
「あ…」
もしかして私、知らないうちに犬飼くんの事を傷つけてる?
私は、犬飼くんと初めて会った時。元気な明るい男の子だと思ってた。
でも、一緒にいるうちに彼の優しさや犬みたいに可愛いところ。色々な彼を知っていく中で、いつの間にか好きになっていた。
だから、犬飼くんともっと仲良くなって自分の気持ちを言う決心がついたら、自分から告白しようと思ってた。
でも、それが犬飼くんのことを傷つけてる…?
「何黙ってるの。もしかして、今更自分がしてた事に気が付いたの?」
「私…、そんなつもりじゃ」
「ちっ」
頭上から舌打ちの音が聞こえた。
「いたっ!」
「っ! 瑠夏!」
私は彼女に強く手首を掴まれて引き上げられる。
「ほら、守に言いに行こうよ。もう関わらないでって」
「な、なんで…」
「だって、海野さん守に興味ないんでしょ? ならそう守に言いなよ。自分の口からさ」
どうして……。どうしてこんな事を言われないといけないの。
私は、悪い事をしていたの?
興味ないなんて、思ってないのに。
「別にすごい可愛いわけでもないのにさ。なんで守はこんな…」
「ちょっと、いいかげんにしなよ!」
「そ、そうだよ。瑠夏ばかりこんなに責めるのは違うよ!」
「私も限界。これ以上瑠夏に何かしたら――」
私の友達三人が立ち上がったその時だった。
「何やってんだよっ!」
教室の入り口の方から男の子の声がした。
「あっ」
犬飼くん……。