世界で一番好きな人
「いや、そういうわけじゃないんだけど…。なんでかボーリングだけは苦手なんだよね…」



あまりにもしょんぼりする茉莉花が可哀想に思えてきて、ボールを一つ取って隣に並ぶ。



「ボールを押し出す感じでやるんだよ。茉莉花は投げ方が良くないから、もっとこう真っ直ぐ押し出すイメージで」


「こ、こう…?」


「そうそう。あと、もうちょっと前出て…よしここ。ここから今言った通りに投げてみ」



茉莉花は真剣にピンを見つめ、ボールを真っ直ぐ投げた。


ボールの軌道は逸れることなく真っ直ぐピンに吸い込まれていき、爽快な音が響いた。



「やった…!ストライク!」



茉莉花がぱっと笑顔で振り向いてきて、不覚にもどきりとする。


久しぶりに向けられた笑顔の破壊力、半端ねぇ…。


赤くなったであろう顔を見られないように片手で顔を押さえ、茉莉花から離れる。
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