世界で一番好きな人
「お願い!LINEだけでいいからさ!」


「えっと…でも…」



茉莉花は俺のことを覚えていないのかもしれないけど、そんなのどうだってよかった。


わからないならこれからもう一度、茉莉花の心の中に残れるようにすればいいだけだったんだ。


俺のことを「一ノ瀬くん」と呼ぶ茉莉花と向き合うのが怖くて逃げていた。これ以上、傷つきたくなかったから。



だけど逃げないで、もう一度茉莉花の手を握って伝えればよかったんだ。



「茉莉花」


「…え?」



一年ぶりに茉莉花の手を握る。相変わらず小さくて温かい手。


それだけでもう、愛しかった。



「行こう」
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