世界で一番好きな人
茉莉花が小さく微笑んだ。


俺に笑いかけてくれて、俺をちゃんと見てくれている。それだけで胸が締め付けられるほど嬉しかった。



「…違う。俺はそんなに優しい人じゃないよ。茉莉花が他の男と連絡先を交換するのが嫌で、嫉妬して連れ出したんだ…」


「…え?」


「こんなこと茉莉花に言っても困らせるだけかもしれないけど、俺は一年前からずっと茉莉花が好きなんだ」



一度口にしてしまった想いは、もう止まらなかった。



「茉莉花は記憶がないからわからないと思うけど、俺たちは一度付き合ってたんだ。…だけど、俺は茉莉花を苦しめて傷つけるだけで、結局守ってあげられなかった」



あの時、俺がもっとちゃんとしていれば。茉莉花は事故にだって遭わなかった。


記憶だって失わなかった。



…こうなってしまったのも、全て俺のしてきたことが招いたことなんだ。
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