世界で一番好きな人
…なんだか気まずい。私も今日は帰ろうかな…。



「梓」



どうしようかと必死に考えていると、千春がベッドをポンポンと叩いてこっちに来るよう促してきた。


大人しくちょこんとベッドに腰掛ける。



「抱きしめてもいい?」


「…え!?」



千春は起きるのもしんどいはずなのに、それでもゆっくりと体を起こした。



「ダメ?今日はちゃんとドアも閉めてるし、看護師の人が来るのも一時間後とかだから誰も来ないよ」


「い、いいけど…」



千春がそんな甘えるようなことを言うなんて、珍しかった。
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