世界で一番好きな人
「あ、村井さん」



私に向けられた笑顔に、やっぱり私はこの人が好きなんだと気づく。


それから千春とは毎日保健室で話すようになり、朝から晩までずっと私の頭の中には千春がいた。



千春と出会ってから一ヶ月が過ぎた頃、私から告白をすると千春は少し困ったように笑って「俺でいいの?」と泣きそうな顔で尋ねてきた。


「当たり前でしょ」と返して抱きつくと、千春は本当に嬉しそうに笑って優しくキスをしてくれた。



千春はその一ヶ月後、病態が少し悪化してしまい再び入院をした。


その後も入退院を繰り返していた千春だったけど、二十歳になる頃にはあまり退院すらしなくなった。


遠出をしたのも高校生の時に鎌倉旅行に行った一度きりで、千春とのデートはいつもなるべく近場やお互いの家にした。


いつ、どこで千春が倒れたとしても行きつけの病院にすぐ運んでもらえるように。



だけど、それでもよかった。


家でお菓子を食べながら千春の隣で映画や漫画を観たり、ゲームをしたりする。
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