世界で一番好きな人
ずっと前から茉莉花のことが好きだよって。



「柊ちゃん、こっちは私の彼氏の千瑛!」



予定より伸びてしまった留学から帰ってくると、茉莉花は幸せそうな見たことのない笑顔で彼氏を紹介してきた。


ショックだったけど、それと同時に仕方ないと思う自分がいた。



俺は茉莉花よりも将来の夢を優先したから。


大切な何かを守るためには、犠牲にしないといけない気持ちだってあるんだ。



茉莉花が幸せならそれでいいと思っていた。



「…え?記憶がない?」


「えっと、うん。正確に言うと入学して一週間くらいまでしか覚えてなくて…」



目を逸らしてボソボソと喋る茉莉花に少し違和感を覚えたが、そんなことよりも気になることがあった。
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