世界で一番好きな人
「ホットコーヒーで」



店員さんが去ってから、犬飼さんは水のグラスについた水滴を指でなぞりながら「茉莉花」と呟いた。



「茉莉花に、振られたんだって?」


「え?あ、うん。さすが親友だね、情報が早い」


「中学の頃から好きだったの丸わかりだったよね、河瀬くん。茉莉花は気づいてなかったけど」



運ばれてきた大きなパフェを犬飼さんが豪快に食べていく。



「だからこそ、河瀬くんならもっと頑張ると思ってたのに。今がチャンスなんだよ?もう諦めるの?振られてもまだ頑張れば、わんちゃん…」


「いいんだ、もう」



犬飼さんの言葉を遮って言い切る。



「茉莉花を幸せにしてあげられるのは、たった一人しかいないから」
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