世界で一番好きな人
「あ、いや、なんでもない…。うん、行こ行こ」



無理矢理笑顔を作り、千瑛の背中を押して中に入る。


…本当はお化けとか怖い系は苦手なんだけど、そんなこと言ったらまた馬鹿にされそうだから黙っておこう。


ここは全く怖がらずに出て、できる女だと思われなくては…!



「ぎゃああああ!ねえ千瑛!なんか今触った!ねえ!」


「うるせぇ…」



ダメだ。やっぱり無理…!


真っ暗で何も見えないし、なんか寒いし。早くここから出ないと、本当に何かに取り憑かれてしまいそうだ。



「うわあ!ねえ、千瑛どこー!?私を置いてかないでー!」


「だーもう!ここにいるって!」



ぎゅっと手を握られ、少しだけ落ち着く。
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