世界で一番好きな人
「それでも不安になるんだよ。幼なじみってことは俺よりも茉莉花のことよく知ってるわけだし、一緒に過ごしてきた時間だって長いだろ?気持ちが変わったとしてもおかしくないだろうし」


「千瑛のことが好きって気持ちが変わるわけないでしょ!私のことよりも、千瑛こそ村井先生のことどうしてずっと黙ってるの!」



思わず言ってしまってからハッと口を押さえるが、もう遅い。



「…梓?どうして梓が出てくるんだよ」


「どうしてはこっちのセリフだよ!先生のこと名前なんかで呼んじゃって、この前だって先生から電話来てそのまま行っちゃったじゃん。それに、昨日だって一緒に歩いてたこと知ってるんだから!」



止められなかった。ずっと胸の内に秘めていた言葉が次から次へと出てくる。



「先生には指輪をくれた彼氏がいるって言ってた!C.Iってイニシャルの!なんで千瑛と一緒なの、どうして千瑛は先生とのこと一言も教えてくれなかったの…?もしかして、最初から私のことは遊びだったの…?」


「ふざけんなよ、なんでそうなるんだよ」


「千瑛が何も教えてくれないからじゃん!」



泣くつもりなんてなかったのに、拭っても拭っても涙が溢れて止まらない。
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