世界で一番好きな人
千瑛に「遊びだった」ってもし言われたらと思うと、怖くて今までずっと聞けなかった。



「あーもう!何勘違いしてるんだよ!わかったよ、着いてこい」


「え」



千瑛は泣きじゃくる私の手を強く引いて、学校を出た。


バスに乗って連れてこられた場所は、病院だった。



千瑛は慣れた手つきで受付を済ませると、エレベーターで三階に上がり奥の病室に入っていった。


その後を、恐る恐るついていく。



中は個室となっていて、窓側に置いてあるベッドに座って窓の外を眺めていた男の人が、ゆっくりとこちらを振り返った。



「…あれ、千瑛?今日来るって言ってたっけ?」



意思の強そうな瞳が私に向けられた。
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