世界で一番好きな人
千瑛に下げた頭をポンポンと優しく撫でられる。



「俺も話せばよかったな、不安にさせてごめん。飲み物買ってくるから、待ってて」



千瑛はそう言うと、私と千春さんを置いて病室を出ていった。


…って、二人きりにしないでよ!



「茉莉花ちゃん、そんなとこに突っ立ってないでこっちにおいでよ」


「あ、はい…。あの、すみません、お恥ずかしいところをお見せしてしまって…」



ベッド脇にある椅子に腰掛けながら、彼氏のお兄さんに初対面で恥ずかしいところを見られてしまったことに、今更ながら頬が熱くなってくる。



「いやー面白いもの見せてもらったよ。でも千瑛が茉莉花ちゃんのこと、すごく好きなことが伝わってきたな。わざわざ連れてくるんだもん。千瑛がそんなことするなんて意外だなー」



あははと千春さんが無邪気に笑った。その笑顔は千瑛にそっくりだ。



「羨ましいな、青春って感じで」
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