世界で一番好きな人
「ふ…っ、うう…っ」



手の痛みなんかよりも、胸の方がずっと痛んだ。


ズキズキと痛くて、苦しくて、思い浮かぶのはさっきの二人の申し訳なさそうな傷ついた顔。



どうして千瑛は咄嗟に彼女の私ではなく、先生を庇ったの?


千瑛にとって村井先生はそんなに大切な人なの?私よりも…?



千瑛でも先生でもなくて、そんなことを考えてしまう醜い自分が一番嫌だった。


どんどん惨めで汚くなっていくこんな私なんて、いらない。



「うあああ…っ」



一度溢れ出した涙と思いは止まらなかった。


苦しくて押しつぶされてしまいそうで、どうしたらいいかなんてわからなかった。





「茉莉花、今日掃除当番だろ?待ってるよ」
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