世界で一番好きな人

目の腫れを引くために二時間も授業をサボったのに、何も聞かずに千瑛はいつも通り接してくれた。


それが、今は苦しかった。



「…ううん、大丈夫！先に村井先生と病院行っててよ。千春さん心配だし、早めに行った方がいいでしょ？」


「そう、だけど…」


「病院着いたら連絡するね。じゃ、中庭掃除だから行ってくる」



まだ渋っている千瑛から早く離れたくて、笑顔で手を振ってから廊下に出る。


本当は行きたくなんてなかったけど、そうしたら二人がもっとわたしに気をつかうのは目に見えているから、行くしかない。



中庭の掃除をなるべく遅めに終わらせて、いつもの倍時間をかけて病院に行く。


エレベーターを降りたところで、そういえば千瑛に連絡すると言っていたことを思い出し、スマホを取り出す。



「…千春、もういつ死んでもおかしくないって…っ」


「まだわからないだろ。あんなに元気そうに笑ってたじゃん」