世界で一番好きな人
好きな人をずっと縛り続けてしまうことの苦しさ。好きな人には、幸せになってほしいと願う気持ち。



好きだから。誰よりも、世界で一番大切な人だから。


だから、離れた方がいいんだ。



「ちょっと待てよ…。なんでだよ…!」


「今の村井先生には、千瑛が必要だよ。千瑛だって、本当の気持ちを隠さなくたっていいの。村井先生が、好きなんだよね?」


「それは…」


「お願い。もう誤魔化さないで。私のせいで、これ以上千瑛の気持ちを殺さないで。村井先生のそばにいてあげて」



もしかしたら、じゃない。私はとっくに気づいていた。


千瑛の村井先生を見つめる瞳がとても優しいこと。千春さんと村井先生がキスをしていた日、すごく泣きそうな顔だったこと。


千瑛の気持ちが私じゃない誰か、村井先生に向けられていたこと。



一度も千瑛に「好き」と言われたことがなかった。
< 93 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop