世界で一番好きな人
俺はそんな梓に想いを伝えることなんてできなかった。



せめて、梓が辛い時に兄貴の代わりにそばにいてあげよう。そう決めた。



そんな俺の前に現れたのは、馬鹿みたいに明るくて素直な女の子だった。



「千瑛ー!あんた、委員長の仕事サボるのもいい加減にしなさいよー!」



名字にお互い“一”がついていることから、ナンバーワンコンビなんて言われて、いつしか隣には茉莉花が当たり前にいるようになった。


最初はただのクラスメイトだと思っていたのに、目が合うと眩しく笑う茉莉花に惹かれていく自分がいた。


茉莉花に恋をしている時は、梓の時とは違い幸せばかりの日々だった。



「…きゃ、千瑛くんに一条さん…!」



梓のことなんて、とっくに吹っ切れていたと思っていたのに。


兄貴とキスをしているところを見ただけで動揺してしまい、そのことに怒りが込み上がってくる自分にショックを受けた。
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