世界で一番好きな人
俺は茉莉花が好きなんだ。梓のことなんて早く忘れないと。


そう思って梓を避けてなるべく関わらないようにして、でも“千春”という共通があることから、梓との縁なんて切れなかった。


そんな中途半端な気持ちだったから、茉莉花を苦しめることになった。



茉莉花を好きな気持ちは変わらないのに。


梓を近くで守れない兄貴の代わりに俺がならないと、という気持ちがあるのも事実だった。



だから、俺は誰も守れなかった。


何も考えないでたった一人、本当に大切な人だけを最初から見ていればよかったんだ。





「…千瑛!目が覚めた!?」


「…母さん?」



真っ白な天井は見覚えがなくて、でも漂う消毒液の匂いに直感的に病院だとわかった。
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