淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
☆☆☆

ひとりの男がここまで脳内から離れなくなるのは始めての経験だった。
それもこれも戸倉瑞樹には自分の力が通用しないのが原因だと思う。

1度ターゲットにした男なのに、簡単には食べることができない。
それは渇望に似た欲求を麻里奈にもたらした。

「あれ、今日もまた早起き?」
翌日いつものように鏡台へ向かって化粧をしている麻里奈を見て鈴子が驚いた顔をした。

「いつもこの時間に出てるでしょ?」
「そうだけど。もう戸倉さんのことは諦めたのかと思ってた」

そう言われて麻里奈は手に持っていた口紅を一旦鏡台へと戻し、小さくため息をはいた。
「まだ諦めてない。だからこれからも早起きは続けるつもり」

正直もう諦めたい気持ちもある。
だけどサキュバスの血がそうさせてくれない。

プロの悪魔として誇りを持っていた先祖の血が暴れている。
「そっか。頑張って」

鈴子はなぜか嬉しそうな顔になってそう言ったのだった。
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