淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
「あ、いえ。あれくらいは別に」
戸倉瑞樹の機嫌がいいのはあの野良猫のお陰のようだ。

「本当に助かります。あいつ、いつか死ぬんじゃないかってずっと心配だったんです」
「ね、猫は飼わないんですか?」

そう質問してみると、戸倉瑞樹はなにかを悩むように顎に手を当てて考え込んだ。
マンション暮らしという理由以外になにか原因があるみたいだ。

「そうですね。今はまだ難しそうです」
戸倉瑞樹が苦笑いのような表情で言った。

その話の詳細が知りたいと思ったけれど、あまり聞いてほしくなさそうな雰囲気だ。
それ以上はなにも聞けないままエレベーターは一階に到着してしまった。

「今日もエサを持って行きます」
「わかりました。僕も時間があれば公園に行きます」

サラリと言って戸倉瑞樹は背を向けて歩き出した。
だけど麻里奈はなかなかそこを動くことができなかった。
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