淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
☆☆☆

「どうしてこうなるのよ」
職場に到着するやいなや、麻里奈はトイレに駆け込んでイライラとつぶやいた。

鏡の中の自分を見ると『ロシアンヌ』にはふさわしくないほど派手な見た目の自分がいる。
さすがに今日は盛りすぎたか。

これじゃ戸倉瑞樹が驚いてしまっていても仕方ない。
朝はとにかく戸倉瑞樹を誘惑することで頭が一杯だったから、ようやくそのことに気がついた。

服はこれしか持っていないから、とにかく髪型だけでも直さないと。
夜の蝶の夜会巻きをほどき、ジャラジャラと髪に巻きつけていてアクセサリーを取るとほどよい見た目になってホッと息を吐き出した。

もしかしたら戸倉瑞樹はこの格好の麻里奈を見て夜の仕事をしていると思いこんだかもしれない。
それならそれでもいいのだけれど、夜の蝶と間違えられたくせに誘われなかったことがはやり心にひっかかった。

それから化粧もし直して麻里奈はようやく店内へと向かったのだった。
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