落ちこぼれ魔女・火花の魔法改革!〜孤独なマーメイドと海の秘宝〜
第34話
「どうしてグラアナの肩を持つの? あなた、もしかしてグラアナに弱みでも握られているの?」
ぶんぶんと首を横に振る。
「弱みなんて握られてないよっ! グラアナは、本当はとってもいい魔女なんだよ! 絶対話せば分かるから」
「話なんて聞いても、なにも変わらないわ。部外者が分かったようなことを言わないで!」
う……王妃様、結構キツい……。
王妃様は憎しみをたっぷり込めた瞳で、グラアナの家を見つめた。
「あの女は、私を恨んでいるの。私を恨んで、私の子であるシュナの声を奪ったのよ……」
「え……」
王妃様は、悲しげに目を伏せた。
「…………でも」
そのとき、がちゃんと背後の扉が開いた。ハッとしてうしろを見る。
「……グラアナ!」
グラアナが家から出てきていた。
当事者の登場に、すっと周囲の音が止んだ気がした。
「皆の者、武器をかまえなさい!」
王妃様が声を上げる。
――と。
「待ってくれ!」
国王様が、その場を制した。
全員の意識が国王様に向いた。
「あなた? どうして……」
王妃様も驚いて国王様を見ている。
「悪いがコルダ……僕は少し、彼女の話を聞きたいんだ」
国王様は王妃様に、優しい声音で諭すように言った。
「どうして!? グラアナはシュナの声を奪ったのよ!?」
『……お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ』
シュナが王妃様の手を握る。
「……シュナ?」
王妃様は困惑したようにシュナと私を交互に見た。
「……ねぇ、シュナはなんて言っているの?」
「あ、えっと……」
代弁しようとすると、
「お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ……ですって」
「えっ……」
代弁したのは私ではなく、グラアナだった。
「グラアナ、シュナの声が分かるの!?」
驚いてグラアナに訊ねる。グラアナはふんとつまらなそうに息を吐いて、淡白に言った。
「そうみたいね」
グラアナも、シュナの声を聴くことができたなんて……。
「シュナは、本当にそんなことを?」
王妃様は驚いて私とシュナを見下ろしている。
シュナは驚きながらも、王妃様を見てこくこくと頷いている。
すっとグラアナが国王様に近づいた。
「……久しぶりね、アーノルド」
「……そうだな」
グラアナは国王様を見て、少しだけ悲しそうな顔をした。
運命の再会……って言うわけにはいかないよね。
「……アーノルド。この子がいろいろと騒がせたみたいで悪かったわね。でも、安心して。私はもう、この海を出て陸に戻るつもりだから」
えっ!?
「待ってよ、どうしてグラアナが海を出ていくの!? グラアナはなにもしてないのに!!」
「……火花、もういいのよ。私にはもう、ここにこだわる必要はないの。そもそもアーノルドに迷惑をかけたいわけじゃないし、これ以上私がここにいたところで、問題を大きくするだけなら、私は……」
「待ってくれ、グラアナ。僕は君の話が聞きたいんだ。……真実が知りたいんだ」
グラアナが黙り込む。
よかった! 国王様は話を聞いてくれる気があるみたい!
「なぁコルダ。少しだけ、彼女の話を聞こう」
国王様が優しく言うと、王妃様は口を噤んだ。
そのとき、シュナが王妃様の手をぐっと引いた。王妃様が驚いてしてシュナを見る。
「シュナ? あなたまでどうしたの……」
『お母様、私……火花やグラアナの話を聞きたいの。火花は嘘をつくような子じゃないし、なによりこれは私自身の話よ。少しだけでいいの。少しだけ、話をさせて。お願いよ、お母様』
シュナは一生懸命声を上げて訴える。けれど、王妃様は困ったように眉を下げて、シュナを見つめるばかりだ。
……聴こえていないんだ。シュナの言葉が。
「王妃様。シュナは、グラアナの話を聞きたいって言ってるよ」
シュナの言葉を代弁すると、国王様と王妃様は顔を見合わせた。
「……でも」
『お母様、お願いよ』
シュナも訴える。代わりに伝えると、王妃様は困ったように口を閉じた。
「……シュナはお願いって、言ってるよ」
シュナはじっと王妃様を見つめている。
「……分かったわ」
王妃様は仕方なさげにため息をついた。
するとシュナはホッとしたように表情を緩めて私を見ると、そのままグラアナへ視線を向けた。
『……初めまして、グラアナ。私はアトランティカのマーメイドプリンセス、シュナよ』
「…………」
グラアナは、黙ってシュナを見つめている。
『私、あなたのことを知りたいの。それから……私自身の声のことも。……私に教えてくれないかしら』
グラアナは気まずそうに一度俯き、ため息をついた。
「……楽しい話じゃないわよ。特に、あなたにとっては」
『それでもいいわ。知りたいの』
シュナは真っ直ぐな眼差しでグラアナを見つめた。
グラアナは一瞬困ったように眉を下げ、くるりと背中を向けた。
「……分かった。それならひとまず中へどうぞ。そんなところで立ち話なんて、プリンセスにさせることではないわ」
『火花も一緒に来てくれる?』
「もちろん」
「火花、俺たちも聞いていいか?」
ノアくんやドロシー、ダリアンがそばへやってくる。
「うん、そのほうが心強いよ。行こう」
こうして私たちは、国王様や王妃様たちと共にグラアナの家に入った。
ぶんぶんと首を横に振る。
「弱みなんて握られてないよっ! グラアナは、本当はとってもいい魔女なんだよ! 絶対話せば分かるから」
「話なんて聞いても、なにも変わらないわ。部外者が分かったようなことを言わないで!」
う……王妃様、結構キツい……。
王妃様は憎しみをたっぷり込めた瞳で、グラアナの家を見つめた。
「あの女は、私を恨んでいるの。私を恨んで、私の子であるシュナの声を奪ったのよ……」
「え……」
王妃様は、悲しげに目を伏せた。
「…………でも」
そのとき、がちゃんと背後の扉が開いた。ハッとしてうしろを見る。
「……グラアナ!」
グラアナが家から出てきていた。
当事者の登場に、すっと周囲の音が止んだ気がした。
「皆の者、武器をかまえなさい!」
王妃様が声を上げる。
――と。
「待ってくれ!」
国王様が、その場を制した。
全員の意識が国王様に向いた。
「あなた? どうして……」
王妃様も驚いて国王様を見ている。
「悪いがコルダ……僕は少し、彼女の話を聞きたいんだ」
国王様は王妃様に、優しい声音で諭すように言った。
「どうして!? グラアナはシュナの声を奪ったのよ!?」
『……お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ』
シュナが王妃様の手を握る。
「……シュナ?」
王妃様は困惑したようにシュナと私を交互に見た。
「……ねぇ、シュナはなんて言っているの?」
「あ、えっと……」
代弁しようとすると、
「お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ……ですって」
「えっ……」
代弁したのは私ではなく、グラアナだった。
「グラアナ、シュナの声が分かるの!?」
驚いてグラアナに訊ねる。グラアナはふんとつまらなそうに息を吐いて、淡白に言った。
「そうみたいね」
グラアナも、シュナの声を聴くことができたなんて……。
「シュナは、本当にそんなことを?」
王妃様は驚いて私とシュナを見下ろしている。
シュナは驚きながらも、王妃様を見てこくこくと頷いている。
すっとグラアナが国王様に近づいた。
「……久しぶりね、アーノルド」
「……そうだな」
グラアナは国王様を見て、少しだけ悲しそうな顔をした。
運命の再会……って言うわけにはいかないよね。
「……アーノルド。この子がいろいろと騒がせたみたいで悪かったわね。でも、安心して。私はもう、この海を出て陸に戻るつもりだから」
えっ!?
「待ってよ、どうしてグラアナが海を出ていくの!? グラアナはなにもしてないのに!!」
「……火花、もういいのよ。私にはもう、ここにこだわる必要はないの。そもそもアーノルドに迷惑をかけたいわけじゃないし、これ以上私がここにいたところで、問題を大きくするだけなら、私は……」
「待ってくれ、グラアナ。僕は君の話が聞きたいんだ。……真実が知りたいんだ」
グラアナが黙り込む。
よかった! 国王様は話を聞いてくれる気があるみたい!
「なぁコルダ。少しだけ、彼女の話を聞こう」
国王様が優しく言うと、王妃様は口を噤んだ。
そのとき、シュナが王妃様の手をぐっと引いた。王妃様が驚いてしてシュナを見る。
「シュナ? あなたまでどうしたの……」
『お母様、私……火花やグラアナの話を聞きたいの。火花は嘘をつくような子じゃないし、なによりこれは私自身の話よ。少しだけでいいの。少しだけ、話をさせて。お願いよ、お母様』
シュナは一生懸命声を上げて訴える。けれど、王妃様は困ったように眉を下げて、シュナを見つめるばかりだ。
……聴こえていないんだ。シュナの言葉が。
「王妃様。シュナは、グラアナの話を聞きたいって言ってるよ」
シュナの言葉を代弁すると、国王様と王妃様は顔を見合わせた。
「……でも」
『お母様、お願いよ』
シュナも訴える。代わりに伝えると、王妃様は困ったように口を閉じた。
「……シュナはお願いって、言ってるよ」
シュナはじっと王妃様を見つめている。
「……分かったわ」
王妃様は仕方なさげにため息をついた。
するとシュナはホッとしたように表情を緩めて私を見ると、そのままグラアナへ視線を向けた。
『……初めまして、グラアナ。私はアトランティカのマーメイドプリンセス、シュナよ』
「…………」
グラアナは、黙ってシュナを見つめている。
『私、あなたのことを知りたいの。それから……私自身の声のことも。……私に教えてくれないかしら』
グラアナは気まずそうに一度俯き、ため息をついた。
「……楽しい話じゃないわよ。特に、あなたにとっては」
『それでもいいわ。知りたいの』
シュナは真っ直ぐな眼差しでグラアナを見つめた。
グラアナは一瞬困ったように眉を下げ、くるりと背中を向けた。
「……分かった。それならひとまず中へどうぞ。そんなところで立ち話なんて、プリンセスにさせることではないわ」
『火花も一緒に来てくれる?』
「もちろん」
「火花、俺たちも聞いていいか?」
ノアくんやドロシー、ダリアンがそばへやってくる。
「うん、そのほうが心強いよ。行こう」
こうして私たちは、国王様や王妃様たちと共にグラアナの家に入った。