落ちこぼれ魔女・火花の魔法改革!〜孤独なマーメイドと海の秘宝〜
第42話
約束の時間になって海辺に戻ると、みんな既に揃っていた。私とノアくんは魔法を解き、人間の姿になってみんなの元へ駆けていく。
「おまたせっ!」
「火花! 火花は見つけた? 海の秘宝」
「うん! これだ! と思うものを見つけたよ! ダリアンたちは?」
「私も見つけたわ」
「うん、私も」
「さて、みんなそろったところで、見せ合いましょうか」
それぞれ持ち寄った海の秘宝を砂の上に置く。
「私はこれ。貝殻よ」
ダリアンが見せたのは、大きな貝殻。とってもきらきらしていて、かたちもきれい。
「わぁっ!」
「マーメイドといったら貝殻だものね」
たしかに!
「ドロシーは?」
「私はこれ」
ドロシーが私に見せてくれたのは、小さな小瓶。中にはきらきら光る水が入っている。
「海だよ。マーメイドといったら、やっぱり海でしょ。この瓶の中に小さな海を作ってみたの」
「すごい! 私じゃ全然想像つかなかったよ。さすがだね、ドロシー」
「グラアナは?」
ドロシーがグラアナに訊ねる。
「私は……結局分からなくて、これにしたわ。魔法を使うためには、必要なものだから」
グラアナは少し自信がなさそうに手の中のものを見せた。黒々とした石に、きらきらした水晶やエメラルド、ダイヤモンドなどが埋め込まれた大きな原石。
「わっ! それってもしかして……」
「星の原石よ」
すごいっ! こんな大きなもの、初めて見たよ!
「なるほど。選ばれしマーメイドっていうのは、魔力を魔女に差し出すことができる魔女って意味かもしれないもんね。私もちょっと悩んだんだよね」とドロシー。
さすが、頭がいいひとは違うなぁ。
どの言葉に、グラアナはホッとしたように表情をゆるめた。
ナイスだね、ドロシー。
「それで、ノアくんと火花ちゃんはなににしたの?」
「俺は……悩んだけどこれにした」
ノアくんはそっと手を差し出した。手のひらには、灰色の石のようなもの。
「なぁに? それ」
「アンブル・グリだよ」
「アンブル・グリ?」
「そう。別名・竜涎香とも言うんだけど、沈没船の中を探検しているときにシュナの部屋に飾ってあったのをたまたま見つけて拝借してきた。アンブル・グリはクジラの結石で、海でしか取れない天然の香料なんだ。とても貴重な、海が生み出したこの世界の宝だよ」
「すごい! さすがノアくん! 絶対それが海の秘宝よ!」
ダリアンの目がハートになっている。
こんなときまでミーハーなんだから、もう。
……まぁ気持ちは分からなくもないけど。
「火花ちゃんはなににしたの?」
ドロシーはノアくんから私に目を向けた。
「あ、えっとね。私はね、これにしたの」
私はそっと、ポケットから薄水色の真珠を取り出した。
「あっ、真珠だ!」
「うん。マーメイドの涙って言われてる真珠だよ。私も沈没船の中で、これを見つけて持ってきたんだ」
「でも、真珠なんてありきたりな気もするわね」
う。
「それを言うなら、ダリアンの貝殻のほうがありきたりだよ」
「なによ! 一生懸命見つけてきたのに!」
「ちょっと、ふたりとも、落ち着いてよ! 今は喧嘩なんてしてる場合じゃないでしょ!」
う、そうだった。
「それじゃ、議論を始めましょうか」
グラアナが立ち上がると、ピリッとした空気が辺りを満たした。
「そうだな……そろそろ夜明けが近い」
「うん……」
世界には、薄紫色の光が差し込んでいた。
「おまたせっ!」
「火花! 火花は見つけた? 海の秘宝」
「うん! これだ! と思うものを見つけたよ! ダリアンたちは?」
「私も見つけたわ」
「うん、私も」
「さて、みんなそろったところで、見せ合いましょうか」
それぞれ持ち寄った海の秘宝を砂の上に置く。
「私はこれ。貝殻よ」
ダリアンが見せたのは、大きな貝殻。とってもきらきらしていて、かたちもきれい。
「わぁっ!」
「マーメイドといったら貝殻だものね」
たしかに!
「ドロシーは?」
「私はこれ」
ドロシーが私に見せてくれたのは、小さな小瓶。中にはきらきら光る水が入っている。
「海だよ。マーメイドといったら、やっぱり海でしょ。この瓶の中に小さな海を作ってみたの」
「すごい! 私じゃ全然想像つかなかったよ。さすがだね、ドロシー」
「グラアナは?」
ドロシーがグラアナに訊ねる。
「私は……結局分からなくて、これにしたわ。魔法を使うためには、必要なものだから」
グラアナは少し自信がなさそうに手の中のものを見せた。黒々とした石に、きらきらした水晶やエメラルド、ダイヤモンドなどが埋め込まれた大きな原石。
「わっ! それってもしかして……」
「星の原石よ」
すごいっ! こんな大きなもの、初めて見たよ!
「なるほど。選ばれしマーメイドっていうのは、魔力を魔女に差し出すことができる魔女って意味かもしれないもんね。私もちょっと悩んだんだよね」とドロシー。
さすが、頭がいいひとは違うなぁ。
どの言葉に、グラアナはホッとしたように表情をゆるめた。
ナイスだね、ドロシー。
「それで、ノアくんと火花ちゃんはなににしたの?」
「俺は……悩んだけどこれにした」
ノアくんはそっと手を差し出した。手のひらには、灰色の石のようなもの。
「なぁに? それ」
「アンブル・グリだよ」
「アンブル・グリ?」
「そう。別名・竜涎香とも言うんだけど、沈没船の中を探検しているときにシュナの部屋に飾ってあったのをたまたま見つけて拝借してきた。アンブル・グリはクジラの結石で、海でしか取れない天然の香料なんだ。とても貴重な、海が生み出したこの世界の宝だよ」
「すごい! さすがノアくん! 絶対それが海の秘宝よ!」
ダリアンの目がハートになっている。
こんなときまでミーハーなんだから、もう。
……まぁ気持ちは分からなくもないけど。
「火花ちゃんはなににしたの?」
ドロシーはノアくんから私に目を向けた。
「あ、えっとね。私はね、これにしたの」
私はそっと、ポケットから薄水色の真珠を取り出した。
「あっ、真珠だ!」
「うん。マーメイドの涙って言われてる真珠だよ。私も沈没船の中で、これを見つけて持ってきたんだ」
「でも、真珠なんてありきたりな気もするわね」
う。
「それを言うなら、ダリアンの貝殻のほうがありきたりだよ」
「なによ! 一生懸命見つけてきたのに!」
「ちょっと、ふたりとも、落ち着いてよ! 今は喧嘩なんてしてる場合じゃないでしょ!」
う、そうだった。
「それじゃ、議論を始めましょうか」
グラアナが立ち上がると、ピリッとした空気が辺りを満たした。
「そうだな……そろそろ夜明けが近い」
「うん……」
世界には、薄紫色の光が差し込んでいた。